中村 宜由医師インタビュー
中村 宜由医師インタビュー

訪問診療で「心の診療」を。
人生をかけてもいい仕事に出会えたことが、僕の幸せです。
― 心臓外科という専門分野から、訪問診療へ。転機は何だったのでしょう?
心臓外科は、今でも「楽しかった」と素直に言えるくらい、やりがいのある仕事でした。
ただ一方で、大学病院の体制や働き方に、少しずつ違和感も覚えるようになりました。結婚をして子どもも生まれ、単身赴任で遠方の病院に勤務していた時期もあります。
自分は仕事にやりがいを感じていても、家族には負担がかかりますし、親も病気をして、すぐに駆けつけられる距離にいたいという思いも強くなっていきました。「心臓外科の仕事は大好き。でも、家族や自分のこれからの人生も大切にしたい」
そう考えたときに、もう一つ自分のやりがいを見つけられる場として、訪問診療という選択肢が見えてきました。患者さんとじっくり関わることができ、家族との時間も大事にできる働き方。自分にとっての次のステージとして、訪問診療を選びました。
― 訪問診療の現場に出てみて、心臓外科との違いをどのように感じていますか?
心臓外科の現場でも、もちろん患者さんの最期に立ち会うことはあります。ただ、その多くは「助かるか・助からないか」が、ある程度はっきりしている状況でした。訪問診療の場合は、患者さんもご家族も、少しずつ「死」と向き合っていく時間が長くなります。
ご自宅や施設で、日々の変化を一緒に見守りながら、その方の人生の最終章に寄り添っていく――。夜中にお看取りにうかがい、「先生でよかった」と言っていただけることもあります。その言葉は本当に嬉しい反面、「もっと何かできたんじゃないか」と自分の対応を振り返ることも多いです。そういう意味で、訪問診療は「心の診療」の側面が非常に大きいと感じています。
患者さんだけでなく、ご家族の心にも寄り添う医療――それが、今の自分の根っこにあるものです。
「患者さんの本心に耳を傾ける」という姿勢は大切
― 診療のうえで、特に大切にされていることは何でしょうか。
一番大切にしているのは、「できる限り、断らない」ということです。もちろん、できること・できないことの線引きは必要ですが、
「これは無理です」「諦めてください」と一言で切ってしまうことは、できるだけしたくありません。そのためには、患者さんのお話をよく聞いて、「本当は何を望んでいるのか」を読み解くことが大事だと思っています。特にご高齢の方は、本心をはっきり言葉にされないことも多いので、表情やしぐさ、家族との関係性などを含めて、丁寧に汲み取るようにしています。診療において、「相手の本心に耳を傾ける」という姿勢は大切なことだと感じています。
― さいたま北クリニックの雰囲気はいかがですか?
初めて来たときに、「こんなに良い先生方・スタッフの皆さんがそろっているんだ」と素直に驚きました。医師も看護師も、それぞれ個性はありながら、みんなが自分なりの診療の芯を持って、真摯に患者さんと向き合っています。
訪問診療はチーム医療なので、誰かが休んだ時にも支え合える関係性や、職場の空気感はとても重要です。ここでは、その「チームとしての温かさ」と「プロとしての厳しさ」のバランスが、とても良いと感じています。
そうした仲間と一緒に診療ができていることに、日々感謝しています。


「この先生に診てもらえてよかった」と思っていただけることは、私自身にとっても大きな幸せ
― 最後に、訪問診療を検討されている患者さん・ご家族へメッセージをお願いします。
もともと私は、「患者さんをしっかり治すこと」を一番の目的に、心臓外科医としてスタートしました。
今は訪問診療という形で、「治すこと」に加えて「その人らしい時間を一緒に支えること」も、同じくらい大切だと感じています。訪問診療は、ときに「憩いの場」にもなり得ると思っています。
診察やお薬の調整だけでなく、他愛もない会話をしたり、家族には言えない本音を少し話していただいたり――そんな時間も、患者さんやご家族にとって必要なものかもしれません。「この先生に診てもらえてよかった」と思っていただけることは、私自身にとっても大きな幸せです。
お互いにそう感じ合える診療を、これからも一つひとつのご縁の中で築いていきたいと考えています。ご不安なことや、こうしたいというお気持ちがあれば、どうぞ遠慮なくお話しください。
皆さまが、できるだけ安心して、ご自宅や施設での時間を過ごしていただけるよう、力を尽くしてまいります。
経歴
- 東京都立大学理学部卒業
- 山形大学医学部卒業
- 日本外科学会外科専門医
- 心臓血管外科専門医
- 自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科
- 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科
- 筑波記念病院心臓血管外科
趣味:ランニングが趣味で、さいたま新都心の自宅からクリニックまで走ることもあります。体が資本なので、無理のない範囲で続けています。家では、3歳の娘と遊んだり、家族でお出かけをしたりする時間が一番のリフレッシュです。「この時間を大切にしたい」と思いながら、日々の診療にも向き合っています。







